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映画『ベリッシマ』 戦後のイタリアの庶民を描いた初期の作品

映画『ベリッシマ』 BELLISSIMA

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ヴィスコンティが描くイタリアの庶民

ヴィスコンティの長編3作品目、デビューから実に9年目の作品でもある(それだけ寡作と言うこと)。
ヴィスコンティ作品の中での位置付けは、もっともイタリア映画らしい作品と言うこと。
1951年当時の現代劇である。
しかも、しっかりロケを中心として作られているので、そこにあるのはイタリアの風情である。
ヴィスコンティはこの作品で、今後の自分の進む道と共に、イタリア映画の進むべき道を提示している作品とも言える。
それは映画は俳優で有ること、物語を語る上でそのキャラクターの個性と俳優の個性が一致する事、それを配役と演技から引き出すことによって一致させることが、重要で有ることを証明して見せた。
この頃、イタリアのネオ・リアリズムの方向が、素人を俳優として起用する事が一つの約束事で有り特徴でも有ったが、それがいつの間にか映画の表現として行き詰まりを見せた事へのヴィスコンティなりの回答のようにも見える。

この作品の完成には、ヴィスコンティと2人の人間の出会いが有った。
一人は、脚本家のスーゾ・チェッキ・ダミーコ
彼女は、その後のヴィスコンティの主要な作品(『ベリッシマ』以後、『華やかな魔女たち』、『地獄に堕ちた勇者ども』、『ベニスに死す』以外の全作品に参加する)の脚本を担当しており、イタリア映画最高の脚本家の一人とされた。
そしてもう一人は、主演を演じたアンナ・マニャーニである。
彼女はヴィスコンティのデビュー作『郵便配達は二度ベルを鳴らす』で、ヴィスコンティが主演にしようとしていたが、妊娠中のため 諦めたという経緯が有る。
ヴィスコンティは、ダミーコの脚本を手に、マニャーニからこの母親像を見事に引き出している。

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物語は自体は、あるイタリア映画の子役のオーディションに夢を抱く母親と娘、そして家族と映画に群がる人々を描いている。
先にも書いたが、子役(素人)を使うことをストーリーの中で皮肉っている一面も有る。
また、同時に、映画が持つお金(資金)に群がり、人を騙す人々も描いている、映画の内幕ものである。


ヴィスコンティの映画『郵便配達は二度ベルを鳴らす』『ベリッシマ』も含むイタリア映画10作品

しかしやはり、この映画のテーマは、アンナ・マニャーニの母親像で有り、イタリアの人々の気質なのである。
ここでイタリアの母親像を、ある意味素直で騙されやすく傷つきやすい女性、それでいながら母親としての強さ、家族への愛情を持った女性として見事に描ききっている。
ヴィスコンティの作品には一貫して、主人公に偏りすぎず寄りすぎず、主人公に対しても冷徹な視線を投げかけている。
それでいながら、主人公が映画の中心に浮かび上がってくるのだから、ヴィスコンティの演出に、今更ながら感心してしまう。

イタリアの庶民の生活がリアルに描かれている。
しかし、それでいてフェリーニやデ・シーカ、ロッセリーニとは“色”が明らかに違う。
ヴィスコンティ自身は、どちらかというと庶民派とは違うが、デビュー作『郵便配達は二度ヘルを鳴らす』、長編第二作『揺れる大地』とこの 作品、リアルにそして不要なものを削ぎ取っていくことで、明らかにイタリア庶民を描ききっているのである。

アンナ・マニャーニの演技を観るだけでも、この作品を観る価値は有る、そしてイタリアの香りを感じる事が出来る作品である。

bellissima

 

映画『ベリッシマ』のデータ

BELLISSIMA 116分 1951年 イタリア

監督■ルキノ・ヴィスコンティ
製作■サルヴォ・ダンジェロ
原案■チェーザレ・ザヴァッティーニ
脚本■スーゾ・チェッキ・ダミーコ/フランチェスコ・ロージ/ルキノ・ヴィスコンティ
撮影■ピエロ・ポルタルーピ/ポール・ロナルド
音楽■フランコ・マンニーノ(ガエターノ・ドニゼッティの『愛の妙薬』による)
指揮■フランコ・フェルラーラ
演奏■オペラ座交響曲管弦楽団/RAI・TV合唱隊・管弦楽団
美術■ジャンニ・ポリドーリ
衣装■ピエロ・トージ
編集■マリオ・セランドレイ
助監督■フランチェスコ・ロージ/フランコ・ゼッフィレッリ
製作会社■ベリッシマ・フィルム
備考■白黒
日本公開■1981年
出演■アンナ・マニャーニ/ヴァルテル・キアーリ/ティーナ・アピチェッラ/ガストーネ・レンツェッリ/テクラ・スカラーノ/ローラ・ブラッチーニ/アルトゥーロ・ブラガリア/リンダ・シーニ/アレッサンドロ・ブラゼッティ/マリオ・キアーリ

【解説】
 娘をベリッシマ(美少女)コンテストに入賞させ、映画スターに育てようと躍起になるマニャーニのステージママぶりが凄まじくも涙ぐましい、初期のヴィスコンティの人情喜劇。ネオレアリスモの精神に則って、力強く戦後まだないローマの庶民生活を描いて、実にみずみずしい作品でもあった。フランコ・ゼフィレッリとフランチェスコ・ロージ(共同脚本も)が助監督についている。映画データベース - allcinema より)

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