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映画『ブラインド・マッサージ』 目が見えないと見えてくる衝撃的な世界

映画『ブラインド・マッサージ』

光を見る目、闇を見る目。

2017年1月14日(土)より、アップリンク渋谷、新宿K's cinemaほか全国順次公開

イントロダクション

南京の盲人マッサージ院を舞台に、激しい感情のぶつかり合い、目の見える人には想像できない人間関係を描いた本作は、2014年第64回ベルリン国際映画祭で銀熊賞を、台湾のアカデミー賞・第51回金馬奨で作品賞を含む6冠、第9回アジア・フィルム・アワードで作品賞、撮影賞など、数多くの賞を受賞した作品。

原作「ブラインド・マッサージ」 ビー・フェイユイ著は中国で20万部のベストセラー小説。
監督は『二重生活』などのロウ・イエ、主演には新星ホアン・シュエン、実力派のチン・ハオなど。

心が震える衝撃作品!

「目には種類があるの。光が見える目と、闇が見える目が――」

一番、印象的だったのは、盲目の美女をマッサージを受けに来た健常者の男性たちが口々に「彼女は美しい」と言う、すると彼女の外見を見ることができない、同僚の盲人マッサージ師が彼女に強い興味を持ち始めること。

人は「五感」を持っているというが、聴覚、触覚、味覚、嗅覚、そして視覚、この中でやはり一番なくて不便なのは視覚なんだと思う。
美的感覚は、視覚と聴覚から得るものがほとんどのような気がするので、視覚がない場合の「美しい」の意味はなんなだろう、と。

そして、盲目でありながら、人として生きると言うことは、恋愛もすればセックスもする。
目が見えないことの不便さ、健常者には計り知れない世界が映し出される

私的『ブラインド・マッサージ

① テーマが有るか?共感できるか?

この作品の根底にあるのは「格差」
中国の中でも(日本も同様だけど)貧富の格差が広がっていて、特に盲目と言う弱者には限られた仕事しかできない。

作品の中で、盲目の主人公が風俗店で売春婦と恋に落ちるが、盲目の人ができる人は自分の肉体を使うマッサージ師くらいしか仕事がない、都会でまっとうなマッサージ師になれる方がまだマシ。
売春婦も自分の身体でお金を稼いでいる

兄弟が背負った借金を肩代わりする話を借金取りとしている中で「目が見えないと、街に立てば”物乞い”としてお金はもらえるが、そんなことはしない」と言う。

② 作り手の強い意思を感じるか?

この作品では目が見えないことが弱者として描かれているが、何が人を弱者にするかは様々であり、そこにスポットを当てることで見えてくるものがある。

盲目の人からは健常者は”怖い”存在らしい、それは見えているものが違うから、接する態度が変わってくる
これは普通の金持ちと貧しい人の間では同じような気がする。

③ 俳優の意思や演技力が伝わるか?

今回、主要な登場人物は、健常者の役者が盲人役をしているが、これは素晴らしかった、てっきり全員盲人の人かと思っていた。

時には人より激しい感情を露わにする、一昨年くらいに聾唖者の若者たちの生態を描いた『ザ・トライブ』がラストに殺人に走ると言う”動的”な描き方だったが、こちらは”静的”な描き方にも関わらず、感情の起伏の幅が大きく感じたのは、役者の力量の差も大きかった。

④ 映画らしい楽しさが備わっているか?

盲目の世界をどう表現するか?どういう世界が広がっているのか、そして彼ら彼女らが何を考えているのか?そして、盲人が人として生きるという深さを描くには、映画でしかできない世界観があった。

⑤ エンターテイメント性

演出が素晴らしいから、飽きることがない。
ただ楽しいだけの話ではない、静的な世界観の中に感情的な激しさに衝撃がある

⑥ 演出が素晴らしいか?

盲目の表現の仕方に、ピンぼけを使ったり、あえて暗闇が続いたり。
盲人にとっては暗闇は、暗闇ではない、それが日常だから。

⑦ 脚本(原作)が素晴らしいか?

主人公の女性に対する感情、カップルのセックス、そして日常の仕事、主人公が少しずつ成長していくことで、暗闇の中に見える人生の光を感じる。

⑧何度も見たくなるか?

自分が体験できないことでもあるので、非常に興味深い。
また、青年が成長する物語として、その感情の起伏の激しさを感じることができる。

今の日本人の若者には少ない「生きる」ことへの欲求を感じることができると言う意味で、見る度に勇気づけられそう。

映画『ブラインド・マッサージ』のデータ

原題■推拿/英題:Blind Massage
製作国■中国/フランス
製作年■2014年
上映時間■115分
監督■ロウ・イエ
脚本■マー・インリー
撮影■ツォン・ジエン
原作■ビー・フェイユイ著 『ブラインド・マッサージ』(飯塚容訳/白水社刊)
編集■コン・ジンレイ、ジュー・リン
出演■ホアン・シュエン/チン・ハオ/グオ・シャオトン/メイ・ティンほか
配給・宣伝■アップリンク
公開日■2017年1月14日(土)より
公開情報■アップリンク渋谷、新宿K's cinemaほか全国順次公開

公式サイトはこちら

■作品紹介
己の“美”に嫌気がさした女、“美”に執着する男、欲望の中で己を失う男――
盲人マッサージ院で巻き起こる人間模様を苛烈に描き、観る者の価値基準を大きく揺さぶる衝撃作。

南京のマッサージ院。ここでは多くの盲人が働いている。幼い頃に交通事故で視力を失い、「いつか回復する」と言われ続けた若手のシャオマー、結婚を夢見て見合いを繰り返す院長のシャー、客から「美人すぎる」と評判の新人ドゥ・ホン。ある日、マッサージ院にシャーを頼って同級生のワンが恋人のコンと駆け落ち同然で転がり込んできたことで、それまでの平穏な日常が一転、マッサージ院に緊張が走る――。

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