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映画『揺れる大地 (海の挿話)』 ネオレアリズモの代表作

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映画『揺れる大地 (海の挿話)』LA TERRA TREMA (EPISODIO DEL MARE)

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ルキノ・ヴィスコンティの生涯についてはこちらから

ルキノ・ヴィスコンティ -作品と演出- はこちら

2017年1月上映 デジタル2Kリマスター版について

今回上映されたものは、2016年3月に修復が完成したリマスター版、尺に関しては今回は160分となっている。
過去の今作品においては165分の記載があったり、紀伊國屋書店から出ているDVDでは158分となっているので、イタリアの古い映画に関しては多数のバージョンが存在すると思ったほうが良い。

DVDと比較してみてもかなり綺麗にリマスター化されている、紀伊國屋書店のDVDに関しても元のフィルムに良いものを使用しているが、DVDにあった白い点がなくなっているのと、画面の端の歪みが消えていた。

『無防備都市』『戦火のかなた』『自転車泥棒』などに並ぶ、ネオレアリズモの傑作、27年ぶり(?)の正式上映なので、この機会に映画館で是非見てもらいたい作品。

-イタリア・ネオレアリズモの軌跡- 公式サイトはこちら

『若者のすべて デジタル完全修復版』
『郵便配達は二度ベルを鳴らす デジタル修復版』 2017年1月7日~
『揺れる大地 デジタル修復版』 2017年1月21日~

2016年12月24日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開

ヴィスコンティ初期のネオレアリズモの傑作

第二次世界大戦後イタリアの苦難の状態を、貴族出身のヴィスコンティが映像化したことに興味が有る。
また、この作品では、プロの俳優を一切使わずにロケ地アチ・トレッツァの人々を起用している点も大きな意味が有る。
ヴィスコンティがこの作品を撮影した時は既に40歳代に入っている。
デビュー作『郵便配達は二度ベルを鳴らす』に続く長編第2作目。

この作品を観ていると、白黒映像にも関わらず、海の碧さが感じられ、しかもそれが非常に塩の香りと魚臭さが感じられる。
後のヴィスコンティ作品に観られるような華麗な映像や流麗な音楽は存在しない。
ここにあるのは、リアルな映像と冷たいまでのナレーションだけと言っても過言ではない。
話は至極単純なもので、仲買人に搾取される漁師達の一人が自立して事業を起こすが、それも挫折していく姿を描いている。
しかし、この映画に映し出されるのは漁師達の本当の貧しさ、それは私が想像するより遙かに苦しいもの。
そこに住む人々は、その事自体に何の疑問を持たず、慣習を重んじ、それを破る者を除け者にしようとする。
ここに浮き彫りにされているのは、労働者<プロレタリア>搾取者<ブルジョア>の関係である。
搾取する人々は、自分達が居てはじめて、労働をするための秩序が存在していると心から信じている。
労働者は、そう言った彼らと共存することによってのみ存在し得ると考えている。
一人の理想に燃える若者アントニオも、結局、一人(一家族)の力では何もできない...無力であることを知るのみだっ た。
冷徹なまでのナレーションがラストに語る...何が足りなかったか?それは“団結”だと。
一人の無力さに涙を流すこの若者、本当の貧しさや、疎外感が彼に涙を流させる。
そして、屈辱のうちに、また、元の虐げられる労働者に戻っていく。

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実際の漁師を俳優に起用することで、その背景となるものまでが、全てリアルに目の前に提示される。
日々の暮らしの苦しさ、そして裕福になった事への妬み、そして家を失い、家族が崩壊していく中で誇りも捨てて最低の暮らしの中に戻っていく姿。
この深い悲しみを正面から冷徹に捉えることで、観る者に悲しみをかき立てる。
そして、それが次への反動となる。
これだけ人々の心情を映し出しながら突き放したところがある、この映像の凄さ!それだけに、悲しいのである。

ヴィスコンティは、第二次世界大戦を通してファシズムに共産党の立場として対峙した。
また、この作品の資金を提供したのも共産党であった。
ヴィスコンティは、この頃は未だ共産主義の理念に燃えていた時期と思える節がある。
そして裕福なイタリアの北部(ヴィスコンティの出身も北部ミラノ)に対して、南部は貧しい事も有る。
彼は自分の貴族出身という立場を脱却しようと、この作品の中で、真の貧しさとその苦しみとその原因を描いてみせた。
そして、貧しさを脱却するには、人々の“団結”が必要であると訴えかける。

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この作品は、彼のこれまでの半生の集大成かもしれない。
いや彼の半生がもたらした、次へのステップへの理想への道程と言うべきかもしれない。
ヴィスコンティ自身も、この作品の後、共産主義の理念が、スターリン主義と共に地に堕ちる事によって挫折を味わう。
そこには人間社会の中にうごめく伝統や習慣、慣習と言うものが欲望に支えられ、理想というものの前に立ちはだかる。
彼の作品は、この作品の後、急激に人間の欲望が生み出す破滅と言うものを描き始める...。
イタリアのネオレアリズモの枠を超えて、真実を描きながらプロパカンダとしてのメッセージ性を持った作品でも有る。

 

映画『揺れる大地 (海の挿話)』のデータ

LA TERRA TREMA (EPISODIO DEL MARE) 165分 1948年 イタリア

監督■ルキノ・ヴィスコンティ
助監督■フランチェスコ・ロージ/フランコ・ゼフィレッリ
製作■サンヴォ・ダンジェロ
原案■ルキノ・ヴィスコンティ(ジョヴァンニ・ヴェルガの『マラヴォリア家の人々』による)
脚本■ルキノ・ヴィスコンティ
ナレーター■アントニオ・ピエトランジェリ
ナレーション台本■マリオ・ピーズ
撮影■G・R・アルド
音楽選曲■ルキノ・ヴィスコンティ/ウィリ・フェルレーロ
編集■マリオ・セランドレイ
製作会社■ウニヴェルサリア
備考■白黒
日本公開■日本未公開
1990年1月19日
2017年1月21日日本公開時:160分

出演■アントニオ・アルチディアコノ/ジュゼッペ・アルチディアコノ/アントニーノ・ミカーレ ※アチ・トレッツアの漁師と住民が演じた。

ヴェネチア国際映画祭 1948年
国際賞 ルキノ・ヴィスコンティ

【解説】
 ヴィスコンティ版「怒りの葡萄」。ネオ・レアリズモ仕様・漁師篇。なんて書くとやたら軽薄な感じだが、事実その通りの内容で、ここで若き巨匠は、ヴィットリオ・デ・シーカ監督に倣ってプロの俳優を一切使わず、シチリア島アーチ=トレッツアの漁師を起用し、作品の現実味を増させることに成功している。網元の搾取に苦しむ漁師たちに組合結成を呼びかける青年アントニオは、網元と結託する警察に捕まる。釈放後、非協力的な村民をしり目に独力で漁に出、これを事業として軌道に乗せるが、ある日、大時化に襲われ、全てを失う。素朴な島の民俗が盛り込まれ、権力と自然に拮坑する労働者の有り様と、一人の若者の闘いと挫折を、力強く描く、ヴィスコンティ初期の意義深い名作。映画データベース - allcinema より)

 元々、監督のヴィスコンティは、漁民たちの状態、農地問題、鉱山の失業というシチリア経済の三つの問題を三部作として描こうとした、この作品はその『海の挿話』の部分。
残念ながら、残りの2話は資金源でも有った共産党から資金が調達できず、製作することが出来なかった。

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