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映画『恋におちたシェイクスピア』 エンターテインメントとしての面白さ!

映画『恋におちたシェイクスピア』 SHAKESPEARE IN LOVE

恋におちたシェイクスピア

作品がシェイクスピアの劇中劇と融合する

丹念に錬られた脚本が、この作品を見事なものにした。

16世紀のイギリス、エリザベス朝を再現してみせる。
シェイクスピア自身が実在の人物か?とも、言われた時期も有る。
登場人物も、実在の人物、そして史実に残る行動も描かれている。
と、同時に大いにその創造の羽を伸ばして、人間関係や出来事を作っていく。
その真実と虚構を融合させている物語の見事さに目を見張る。

劇中劇である「ロミオとジュリエット」は、元々、イタリアの説教くさい話がベースになっているとも。
それを思い切って、シェイクスピア自身の恋と結びつけたアイディアの良さ!シェイクスピアの作った物語を知り尽くしたスタッフが、その世界を見事に(私のようなそれ程、詳しくない人間にも)分かり易 く作品の中に取り入れている、これこそ脚本の上手さ!

この作品の最も素晴らしい点がここに有る。
そうシェイクスピアとその恋人ヴァイオラの話すセリフの素晴らしさ!!
シェイクスピア劇そのままの独特な言い回し、そして劇の中のセリフのような会話。

「ロミオとジュリエット」のセリフと映画のセリフが見事に融合する。
セリフが見事に言霊になる。
そうロミオのセリフが、ジュリエットのセリフが、シェイクスピアとヴァイオラの恋の会話になる。
劇中劇の「ロミオとジュリエット」がどうやって出来たか?その言葉一つ一つに込められたシェイクスピアの思い、それが伝わってくる。
映画そのもの以上に、劇中劇『ロミオとジュリエット』に感動する、涙する。

かつて映画『アマデウス』が、ウォルフガング・アマデウス・モーツァルトの作品(音楽)を見事に魅せた作品になっていた。
と同様に、この作品ではシェイクスピアの劇(ここでは「ロミオとジュリエット」)を見事に魅せてくれる、いや見方を教えてくれる。

グウィネス・パルトロウが、アカデミー賞主演女優賞を見事に授賞したが、クィーンズ・イングリッシュを駆使して、表情豊かにヴァイオラを演じているのを見ると相応しいのが判る。
脇役陣はもう素晴らしいとしか言えない。
ジュディ・デンチは見事としか言いようがない存在感!ジェフリー・ラッシュの道化ぶりも楽しい。
ラストのヴァイオラが「十二夜」にひも付くところは、ツボを押さえている!

蛇足:この作品は公開最終週に劇場に行ったけど、観客が1割もいなかった(泣)お陰で一番観やすいところでゆったり静かに観れたけど。

Reviewed in 07.1999

恋におちたシェイクスピア

Miramax/Photofest/ゲッティイメージズ

「ロミオとジュリエット」から「十二夜」へ

ワイド・テレビとDVDプレイヤーを購入したので、再度、DVDビデオでこの作品を再見。

また観ると新しい発見が!
それにしてもこの作品、本当に脚本が良くできている、つくづく感心させられる。

そして脚本だけではなく、演出も素晴らしい。
脚本の出来に良く応えて、見事な画面構成を見せてくれる。
映画を娯楽と言うなら、この恋愛劇は見事な映画と言えるだろう。

「ロミオとジュリエット」の物語が出来るまでを、“ウィル”・シェイクスピアとヴァイオラの恋と絡めて進行させていくところは見事。
と同時に、映画の後半では徐々に「十二夜」の物語もタブって来る。
このあたりは、う~ん、と感心させられる。※ ちなみにシェイクスピアは好きで本はかなり読んでいる

それと(おそらく)「ロミオとジュリエット」の物語を知らなくても、何となくその全体像が見えてくる。
と言うのは、劇中劇の「ロミオとジュリエット」は、シーンをトピックス的に取り上げているに過ぎないのだが、それまでの映画のストーリーとだぶっているので、その悲劇的な物語が伝わってくる。

面白いのが、この脚本家たちがメイキングで語っているが、物語を書く仕事をする人間の共通の悩みを、天才シェイクスピアにも投影していること。
シェイクスピアも、一つの物語を生むために悩み苦しみ、そして自らの体験で綴っていく。

もう一つ、これは劇の舞台裏も描いている。
劇の俳優達の姿、飲み屋で飲んだくれたり、台詞の練習をしたり、その苦労する姿も楽しめる。

この入り乱れるような物語を、映像で絡めて一本のストーリーに見せるあたりは、監督ジョン・マッデンの力量がうかがえる。

このDVDビデオには、映画からカット編集されたシーンが特典映像として付いている。
その中で重要なのが、もう一つのラスト。
ここでヴァイオラの乗った船が難波して、漂流した先が“アメリカ”だと台詞で語られる。
それと、その前のシェイクスピアとヴァイオラが別れるシーンでは、このカットされた方は、別れを惜しみながら悲しみの中に別れていく。
もちろんオリジナルはご存じのように、シェイクスピアとヴァイオラの会話がそのまま、「十二夜」の物語へと続いていく。
実はこれ、オリジナルの方が数段優れているのだけど、ここにもこの映画の良さが伝わってくる。

シェイクスピアの作った物語が、実は彼の人生の一部であることが判るからだ。
改めてみると確かに面白いし、グウィネスの男優役も結構面白い。
お勧めできる一本である。

Reviewed in 05.2000

2017年から1999年の公開時を振り返ると

この作品はこの年のアカデミー賞で、実に13部門にノミネートされ、作品賞・主演女優賞(グウィネス・パルトロウ)を含む7部門で受賞した。
この年は大激戦だったと思う、他に『エリザベス』『ライフ・イズ・ビューティフル』『プライベート・ライアン』『シン・レッド・ライン』と話題作がノミネートされている。

今振り返ると『プライベート・ライアン』の評価が一番高いように思うし、私個人的にも、どの作品も好きだが、特に『プライベート・ライアン』が後世に残る名作と言えるかも。

一方でも、映画のエンターテインメント性とアカデミー賞というお祭り、映画をたくさんの人にもらったことによる功労賞的な意味合いで考えると『恋におちたシェイクスピア』の作品賞受賞も個人的には納得の結果ではある。

映画『恋におちたシェイクスピア』のデータ

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SHAKESPEARE IN LOVE 123分 1998年 アメリカ

監督■ジョン・マッデン
製作■デヴィッド・パーフィット/ドナ・ジグリオッティ/ハーヴェイ・ウェインスタイン/エドワード・ズウィック/マーク・ノーマン
製作総指揮■ボブ・ウェインスタイン/ジュリー・ゴールドスタイン
脚本■マーク・ノーマン/トム・ストッパード
撮影■リチャード・グレートレックス
美術■マーティン・チャイルズ/ジル・クォーティアー
衣裳■サンディ・パウエル
ヘア&メイク■リサ・ウェストコット
編集■デヴィッド・ギャンブル
音楽■スティーヴン・ウォーベック
出演■グウィネス・パルトロウ/ジョセフ・ファインズ/ジェフリー・ラッシュ/コリン・ファース/ルパート・エヴェレット/ベン・アフレック/ジュディ・デンチ/トム・ウィルキンソン/サイモン・カロウ/ジム・カーター/マーチン・クラネス/イメルダ・スタントン

アカデミー賞 1998年
作品賞授賞
主演女優賞授賞 グウィネス・パルトロウ
助演男優賞ノミネート ジェフリー・ラッシュ
助演女優賞授賞 ジュディ・デンチ
監督賞ノミネート ジョン・マッデン
脚本賞授賞 トム・ストッパード/マーク・ノーマン
撮影賞ノミネート リチャード・グレートレックス 音楽賞(オリジナル・ミュージカル/コメディ)授賞 スティーヴン・ウォーベック
美術賞授賞 マーティン・チャイルズ/ジル・クォーティアー
衣裳デザイン賞授賞 サンディ・パウエル
メイクアップ賞ノミネート ヴェロニカ・ブレブナー/リサ・ウェストコット
音響賞ノミネート ドミニク・レスター/ロビン・オドノヒュー/ピーター・グロサップ
編集賞ノミネート デヴィッド・ギャンブル

ベルリン国際映画祭 1999年
功労賞授賞 トム・ストッパード/マーク・ノーマン

NY批評家協会賞 1998年
脚本賞授賞 マーク・ノーマン/トム・ストッパード

ゴールデン・グローブ 1998年
作品賞(コメディ/ミュージカル)授賞
女優賞(コメディ/ミュージカル) 授賞グウィネス・パルトロウ
脚本賞授賞 トム・ストッパード/マーク・ノーマン

<DATA>

 芝居熱が過熱する16世紀終わりのロンドンで、新進気鋭の劇作家シェイクスピア(ジョセフ・ファインズ)が恋におちた。
 一人の女性ヴァイオラ(グウィネス・パルトロウ)を愛して、愛して、愛して・・・その狂おしさから、あの華麗なる悲劇“ロミオとジュリエット”は生まれた。
 不朽のラブストーリー誕生の陰に存在した本物の恋。

 天才劇作家シェイクスピアが、今、歴史の壁をくぐり抜け、ひとりの“恋する男”になる。
 若き日のシェイクスピアに扮しているのは、「魅せられて」のジョセス・ファインズ。
 射すくめるような瞳で、シェイクスピアの才気と情熱を強烈に演じている。
 一方、運命の女性ヴァイオラには、「エマ」、「スライディング・ドア」で魅力全開のグウィネス・パルトロウ。

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