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映画『雪女』 現代・雪女の愛とエロティシズム

映画『雪女』

あなたに また、
あいたかった-

2017年3月4日(土) よりヒューマントラストシネマ有楽町、シネマ・ジャック&ベティほか全国順次公開

現代に蘇る雪女

100年以上前の小泉八雲の「怪談」の一遍「雪女」を杉野希妃監督が独自の解釈で、現代の「雪女」として蘇らせた作品。
彼女自身が、主演の雪女とユキの二役に挑んだ意欲作。
撮影も杉野希妃監督の故郷・広島(尾道を中心として)で撮影が行われた。

雪深い寒村で、ユキという見知らぬ土地から来た女性を妻にしたことから、村の中では彼女や彼女の娘を差別視する。
日本という排他的な社会を象徴するかのようでもあり、ユキと青木崇高演じる主人公の巳之吉役の二人が愛の力で乗り越えて行く。

 

本来、雪女という怪物を、人を愛した一人の女性として描いている
とても現代的なメロドラマでもあり、ユキを演じる杉野希妃の妖艶な美しさを楽しむ作品とも言える。

またそれが日本的な映像とも余って、非常に美しい映像としてスクリーンに映し出される。
日本の美というものを、発信している作品とも言える。

私的『タイトル』

テーマが有るか?共感できるか?

どちらかと言うとホラー的な視点で怖いもの、というのが「雪女」の存在で有ったが、この作品では人間を愛してしまった一人の女性という視点から描いている。

その一方で、人間がよそ者を迫害してしまうさまを描いていると言う点で、現代社会を感じる。

作り手の強い意思を感じるか?

杉野希妃が自ら演出して演じている、雪女の愛の強さがこの作品の芯となるが、体当たりの演技でそれを見せてくれている。

俳優の意思や演技力が伝わるか?

杉野希妃監督が、主人公に青木崇高を起用したのは「山臭さを感じたから」だという。
彼の野性味あふれる力強い部分が、ユキを飲み込んでいく愛の力となっている。

またベテランの佐野史郎や宮崎美子らの演技も、日本の古典的な部分を上手く引き出している。
若手の山口まゆが、日本人らしい少女を好演している。

映画らしい楽しさが備わっているか?

部落的な差別の隠喩を感じるとともに、杉野希妃の本気の演技は映画ならでは。

エンターテイメント性

国際派映画人・杉野希妃として、日本の伝統を映像化している点や上野彰吾のカメラがそれを見事にモノクロとカラーで切り取っている。

ただ時代設定が良くわからず混乱、マタギ(東北・北海道だけの名称?)の姿や着物姿と同時に、普通の背広も出てくるので、第二次世界大戦後のどこか、なんだとは思う。

演出が素晴らしいか?

独特の世界観がある、日本人が見ても(当たり前だが)違和感のない寒村。
そして古くからの行事。

一方で、海外を意識していると思われる所作の長回しによる撮影、日本発の作品としての見せ方としては「なるほど」というところがあった。

脚本が素晴らしいか?

今回は完全に、男女の愛に重きを置いている。
その中で、二人の娘の存在の大きさを感じる、ただ娘を捨てて出ていくのだろうか?
雪女は不老不死なのかな・・・と。

日本という国の不思議さ、美しさを堪能できる作品としてオススメ。

映画『タイトル』のデータ

出演■杉野希妃/青木崇高/山口まゆ/佐野史郎/水野久美/宮崎美子/山本剛史/松岡広大/梅野渚/ほか
監督■杉野希妃
エグゼクティブプロデューサー■坂本敏明/田中弘樹/梶浦隆章/小野光輔/門田大地/市村友一 
プロデューサー■小野光輔/門田大地
コプロデューサー■福島珠理/山口幸彦
2016年/日本/日本語(英語字幕付)/96分/カラー&モノクロ/シネマスコープ/Stereo/
©Snow Woman Film Partners
配給:和エンタテインメント

公式サイトはこちら

【ストーリー】

—恐怖と神秘と、そして雪の結晶のように繊細ではかなく美しい愛の物語—

ある時代、ある山の奥深く、吹雪の夜。猟師の巳之吉は、山小屋で、雪女が仲間の茂作の命を奪う姿を目撃してしまう。
雪女は「この事を口外したら、お前の命を奪う」と言い残して消え去る。
翌年、茂作の一周忌法要の帰り道に、巳之吉は美しい女ユキと出会う。
やがて二人は結婚し、娘ウメが生まれる。
14年後。
美しく聡明な少女に成長したウメは、茂作の遠戚にあたる病弱な幹生の良き話し相手だった。
しかしある日、茂作の死んだ山小屋で幹生が亡くなってしまう。
幹生の遺体には、茂作と同じような凍傷の跡があった。
ユキの血を引く娘のせいだと、巳之吉を激しく問いつめる幹生の祖父。
巳之吉の脳裏に14年前の出来事が蘇り、以前から自分の中にあったユキに対する疑心と葛藤する。
自分があの夜の山小屋で見たものは何だったのか、そしてユキは誰なのか…。
©Snow Woman Film Partners

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