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映画『メッセージ』 見終わった後に語り合いたくなる作品(ネタバレあり感想)

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映画『メッセージ』 Arrival

メッセージ

ある日突然、巨大飛行体が地球に。
その目的は不明--

2017年5月19日(金)全国公開予定

静かで深淵なSF映画、派手さはない

突如世界各地に現れた物体、それは宇宙船だったが、彼らの発するメッセージを解読することに時間がかかっていた。
そこにエイミー・アダムス演じる主人公ルイーズが指名されて、宇宙人とコンタクトをとることになるという物語。

俗にいうファーストコンタクトもので、『2001年宇宙の旅』やスピルバーグ監督の『未知との遭遇』『E.T.』などもこのジャンルに入る。
『インデペンデンス・デイ』のような宇宙人と地球人の戦いを描いたものも、コンタクトものの一つの形であり、『宇宙戦争』などこちらもたくさん生まれてきた。

この作品は、どちらかというと『2001年宇宙の旅』や天文学者カール・セーガンのベストセラーを映画化した『コンタクト』に近く、作品の物語の進め方は『2001年宇宙の旅』に近い。

この作品を見終わった時にいろんなことを考えさせられる、またいろんな解釈もできる作品となっている。
作品的には低予算だからという訳ではないだろうが、派手な演出がなく、90%以上にエイミー・アダムスが登場する人間ドラマになっている。

宇宙人が一体何を伝えたいのか?むしろそれを地球の人々はどう解釈をしたいのか?という点でサスペンス・タッチで話が進み、ラストは思ってもいなかった事実が明かされて行く。

映画を見た後に議論をしたくなる映画だが、この解釈の自由さを好むかどうかは賛否が分かれるところ
ちなみに私は、この手の作品が大好きだから、いろんな人に大きなスクリーンで見て欲しい作品と思っている。

SFなのに見た人の人生観を問いかける作品

監督は『プリズナーズ』や『ボーダーライン』で手堅い演出をし、次回作では『ブレードランナー2049』を監督するドゥニ・ヴィルヌーヴ。
現在、注目の監督で『ブレードランナー』の続編の後には『砂の惑星デューン』の続編(リメイク?)も待っている。

今年のアカデミー賞では、作品賞、監督賞、脚色賞など8部門にノミネートされ、音響編集賞を受賞している。
意外なのは、ゴールデン・グローブ賞、他でノミネートされている主演女優のエイミー・アダムスがアカデミー賞ではノミネートされなかったこと。
個人的には『ラ・ラ・ランド』のエマ・ストーンは努力賞も含めて受賞に相応しいとは思うけど、この作品のエイミー・アダムスは勝るとも劣らないくらい素晴らしい演技をしている点も見どころ。

この作品は中国人のテッド・チャンの原作があるので、物語の構成は原作そのものだとは思うが、ラストでアッと驚かされるのは、編集の上手さがあると思う。

SF映画であり、巨大宇宙船は出て来るが、決して派手なVFXもなく、むしろ静かで印象的な音楽をベースに人間ドラマが展開されていき、見ている人の人生観や死生観といったものが試される映画でもある気がする。

2017年のベストの中の1本と言える。

メッセージ

私的『メッセージ』 ここからはネタバレがあります(鑑賞後にどうぞ)

テーマが有るか?共感できるか?

この作品は見終わった時点で、テーマは何か?それ以前に宇宙人はなぜ地球に来たのか?など、そこから語らないといけない作品。

この作品の中では運命が明示されているにもかかわらず、自分で運命を選択することを繰り返している。
運命は存在すが、運命を選択していくのはあなた自身だ!冒頭に「これはあなたの人生の物語です」というセリフから始まるが、これがラストへの作品のメッセージとなっている。

作り手の強い意思を感じるか?

原作者の意図を、ヴィルヌーヴ監督が汲み取って丁寧に演出している。
上映後にヴィルヌーヴ監督の話を直接聞くことができて、感じることができた。

タコのような七本脚の宇宙人ヘプタポッドが出て来るが、これは原作に出てくるもので、この宇宙人が表す文字が非常に重要な意味を持っている。
このあたりを忠実に映像化している点も重要。

輪のような文字は、中国語や日本語の漢字のような表意文字であり、文章でもある。
一つの円の中に、形から読み取れる文章がある、しかも円なので始まりも終わりもない文章

カナダ人(英語・フランス語圏)の監督にとっては、表意文字は新鮮であり興味深いところだと思う。

俳優の意思や演技力が伝わるか?

主人公ルイーズは宇宙人と対峙するが、時折、娘のハンナとの日常のやり取りが脳裏に浮かぶ、その映像に写る娘ハンナは、年齢がバラバラでルイーズが宇宙人とコンタクトしている今現在には存在しないらしい、ということが判る。

作品を見終わった時に判ることだが、ルイーズを演じたエイミー・アダムスはハンナを演じた子役とどういう立ち位置で向き合ったら良いか、非常に繊細な演技を求められていたと思う。

映画を見続けていくと、ルイーズの行動に違和感や一貫性のなさを感じたりする、そこをエイミー・アダムスが演じ分けをしている点で秀逸だった。

映画らしい楽しさが備わっているか?

明確なテーマと観客への投げかけを持っている作品は、映画でしかできないと私は思っている。
TVシリーズで冗長的に投げかけることはできないし、基が小説ではあるが時間軸の構成に関しては、やはり映像による表現力の高さは素晴らしいと思う。

時間の概念に関しては『インターステラー』よりも優れていると思う。
これは映像化というより物語の持つ力と編集の上手さによるものだと思う。

エンターテインメント性

人間ドラマとSFとの融合のしかたが面白い。
宇宙人が来襲して、地球ではパニックが起きながら、宇宙船の周りでは整然と作業が行われている。

映像の美しさや宇宙船の内部構造の巧みさはなかなか面白い。
基本的にはモノリスと同じで、物体そのものが何なのか?は判明しないが、そこがまたサスペンス要素を盛り上げている。

そして宇宙船という密室の中で、濃密なエイミー・アダムスの演技が行われている点も面白い。

演出が素晴らしいか?

今回は観客をどこまで騙しきるか!が重要で、その点に関しては見事だった。
作品が投げかけてくる疑問点は観客にボールが投げられているが、ストーリーとしての流れとしては、見終わった時に「なるほど!」と唸ってしまう。

脚本が素晴らしいか?

原作の持つ過去・現在・未来といった時間軸を持たない生物とのコンタクト、それがサスペンスのようにラストで解き明かされて、何となく感じていた矛盾が一気に一つの線になるところは、脚本の素晴らしさに尽きる。

何度も見たくなるか?

主人公のルイーズは宇宙人とコンタクトをしてるうちに、自分の体験していることに時間の前後ないことに気付いていく。
そして、それでも彼女は未来に不幸なことが待っていたとしても、それを選択する決断をする。

再度、この時間軸の部分を意識しながら見てみたいという点もあるが、その時点でのルイーズの決断が、その時の彼女の心理的な心の表れであり、そのベースにあるのが善意や愛であることには間違いないと思うが、心の機微を確認したいところ。

これも私の想像だけど、例えばルイーズは子供を育てる母親の無償の愛を選択することになるが、その後に待ち受ける悲劇も受け入れることになる。
地球を救うことになる彼女の行動も、人と人との善意があって成り立つことでもあった。

この作品を見て最大の疑問であり結論が出ないのは、中国のシャン将軍の妻が何を言ったのか?だ。

「非ゼロ和」についての解釈(2017年5月30日追記)

私にとっては聞きなれない言葉だったけど、英語に直すと non zero sum なるほどとなる。
英語を見れば判るように、普段は逆の言葉の zero sum game とかよく使うが、ゼロサム=ゼロ和は一人が得をすると必ず誰かが損をするという考え方、全員の利得の総和がゼロになると言う考え方。

ゼロサムはサイコパスが得意な分野で、最近は脳科学者の中野信子さんも書籍で書かれているが、サイコパスは会社社長や弁護士など社会的成功者に多いと言われている。
それは資本主義が、冷静に人から奪う能力が高いほど成功することと一致している。

「非ゼロ和」とはその逆であり、資源の蓄積していく過程で、誰かが利益を得たとしても他の誰も損失にはならないことである。
時間がサークルすること共に、宇宙から来たと思われる生物(もしくは未来の人間)には非ゼロ和の考え方が、そのサークル文字から感じられる。
人の生死にも時間軸がないから、+-ではなく存在している時間と存在していない時間があるだけと考えられる。

宇宙人はルイーズに助けを求めるが、このサークル文字を解析することが彼らを助けることになる。
ルイーズがシャン将軍を説得して世界を救ったのと同じ意味を持っている。

非ゼロ和という言葉を一番近い英語にすると、Win-Win である。
人類はゼロサムゲームから脱却しないと滅びるというメッセージだったのかもしれない。

映画『メッセージ』のデータ

メッセージ

監督■ドゥニ・ヴィルヌーヴ
脚本■リック・ハイセラー
原作■テッド・チャン(「あなたの人生の物語」ハヤカワ文庫刊)
撮影監督■ブラッドフォード・ヤング
プロダクション・デザイン■パトリス・ヴァーメット
音楽■ヨハン・ヨハンソン
製作■2016年アメリカ映画/スコープ・サイズ/116分
配給■ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
出演■エイミー・アダムス(ルイーズ・バンクス)/ジェレミー・レナー(イアン・ドネリー)/フォレスト・ウィテカー(ウェバー大佐)/マイケル・スタールバーグ(ハルペーン)

© 2016 SONY PICTURES DIGITAL PRODUCTIONS INC. ALL RIGHTS RESERVED.
© 2016 XENOLINGUISTICS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

公式サイトはこちら

【イントロダクション】

突如出現した未知なる飛行体―。
“彼ら”は人類に<何>を伝えようとしているのか?
『ブレードランナー』続編の監督ドゥニ・ヴィルヌーヴが贈るすべての人の胸を打つ感動のSFドラマ。

【ストーリー】

突如地上に降り立った、巨大な球体型宇宙船。謎の知的生命体と意志の疎通をはかるために軍に雇われた言語学者のルイーズ(エイミー・アダムス)は、“彼ら”が人類に<何>を伝えようとしているのかを探っていく。
その謎を知ったルイーズを待ち受ける、美しくそして残酷な切なさを秘めた人類へのラストメッセージとは―。

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