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映画『イノセント』 ヴィスコンティ最後のエロティシズム

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映画『イノセント』 L'INNOCENTE

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ルキノ・ヴィスコンティの生涯についてはこちらから

ルキノ・ヴィスコンティ -作品と演出- はこちら

ヴィスコンティの遺作でありながら、優美の映像が展開する

ヴィスコンティの他の作品と同様、俳優陣の素晴らしさが光る。
ヴィスコンティ以外の映画では平凡な役者に終始していても、彼の演出の元では光り輝くようだ。
ヴィスコンティ最後の作品は、個人のレベルでその苦悩と挫折を描いて魅せた。
前作の『家族の肖像』よりも『ルードヴィヒ/神々の黄昏』に近いテーマを描いている。
テーマの深さ、それを掘り下げる一切の破綻のない演出の完璧さは、どの作品を見ても感心させられる。

この作品では、理想的な男性像(あくまで男性から見てなのかもしれないが・・・)の夫が、不倫を繰り返す。
それに耐えかねた妻が、自ら不倫の末、妊娠をする。
他の男性の子供を産むことにより、夫の精神的な崩壊を招く。
そこには男性の欲望とその悲劇的な結末が描き抜かれている。
ラストのシーンは原作と違い、夫の自殺のシーンで終わる。
この作品はこれまでのヴィスコンティの作品以上に、エロチシズムに富み抽象的な映像が散りばめられている
その絢爛豪華さにはヴィスコンティの衰えを知らない創作意欲を感じずにはいられない。
所詮、男性は女性・特に母親の前には屈服するしかないのか?

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ヴィスコンティの遺作であり、この作品のダビング中に亡くなった。
一般的にこの作品が、これまでのヴィスコンティの作品に比べると力が落ちたと言う人も多くいるが、私は逆にこの作品を観てヴィスコンティは最後まで、情熱をもって完璧な作品を作り続けたと感じることが出来た。
この作品は、これまでのヴィスコンティの作品からは少し趣が違っている。
これまでの作品は、(特に彼の後半の作品群)同性愛的嗜好が作品の中に横たわっていること、ある時代の崩壊(王侯貴族であったり、財閥であったりする)を描いている。
耽美的という点ではこの作品も含まれるが...

改めてこの作品を観て、やはり、映像の美しさに惹かれる。
これまでの作品以上に鮮やかな彩りを持っている。
室内装飾や衣装と言った点においても、黒や赤、そして金色と言った色彩と、草木の緑と言った色を鮮やかに使いこなしている。
このバランスと美しさも、この作品の見所と言えそう。

そして、この作品はヴィスコンティの作品の中でも、現代的なテーマを取り上げている点で非常に分かり易いストーリーとも言える。
男女の恋愛、日本で言うところの失楽園的な恋愛をディテイルにしている。
そこの描かれているのは単純な不倫と言うものではなく、夫婦の内面であり、男女の愛の内面、そこに潜む狂気と男性に取っての人生観までを描いている

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またヴィスコンティ作品には珍しくエロティックな表現も有り、その使い方が大胆で効果的であったし美しく艶めかしくもあった。
この作品を観ると、ヴィスコンティは映画の中で主題そのものを描くと言うことよりも、自分の好きなテーマを表現するのに合った題材の脚本(や原作)から、実はそこに棲息する登場人物達の人間性(欲望であったりその地位であったり)を描くことのみに、その表現を用いているのでは?と考えさせられる。
この作品では、不倫と嬰児殺しと言う点がテーマになるが、その裏には男性の恋愛に対する考え方と、(二人の)女性の考え方、そして恋愛と結婚というものに対する考え方を描いて見せている
愛人(ジェニファー・オニール)の自由奔放な生き方と、妻(ラウラ・アントネッリ)の貞淑な生き様、その中に描かれた女性の魔性...理想の男性像のプレイ・ボーイでありながら、結局、女性を理解することが出来なかった主人公(ジャンカルロ・ジャンニーニ)。
全てを失った(と言っても女性からの愛だけだが)彼には存在する理由が無かった...

それは、現代に於いても、日常的な恋愛の裏側に潜む人間関係や人の欲望で有り、自分の周りでも常時起こっている普遍的なものとも言える。
この作品では非常に俳優の目の動きが印象的だった、特にジャンニーニの鋭い眼光は魅力的だった。

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映画『イノセント』のデータ

L'innocente 125分 1975年 イタリア

監督■ルキノ・ヴィスコンティ
製作■ジョヴァンニ・ベルトルッチ
原作■ガブリエレ・ダヌンツィオ
脚本■ルキノ・ヴィスコンティ/エンリコ・メディオーリ/スーゾ・チェッキ・ダミーコ
撮影■パスカリーノ・デ・サンティス
音楽■フランコ・マンニーノ/ショパン『ワルツ69・70・64』、『子守歌』/モーツァルト『ピアノ・ソナタK331』/リスト『エステ荘の噴水』/グルック『エウリディケを失って』
編集■ルッジェーロ・マストロヤンニ
美術■マリオ・ガルブリア
衣装■ヴェラ・マルツォ/ピエロ・トージ
助監督■アルビーノ・コッコ/ジョルジオ・トレーヴェ
製作会社■リッツォリ・フィルム
備考■テクニカラー、コスモヴィジョン
日本公開■1979年
出演■ジャンカルロ・ジャンニーニ/ラウラ・アントネッリ/ジェニファー・オニール/ディディエ・オードバン/リーナ・モレッリ/マッシモ・ジロッティ/マルク・ポレル/マリー・ジュポワ/カルロス・デ・カルヴァーロ/クロード・マン

【解説】
 ダヌンツィオの原作を仰ぎ、ヴィスコンティが幼少期に映画的洗礼を授かった、イタリア・サイレント期のロマン主義的傾向の恋愛劇へのオマージュとしての、典雅にして不気味な貴族の愛憎物語。未亡人の愛人(美しすぎて怖いJ・オニール)にうつつを抜かし、盲目的な愛国主義に溺れる、嫉妬深い男(ジャンニーニのキャリアの頂点!)。失われゆく19世紀の栄華、そして新しい世紀への不安は彼を、その不実に悩み苦しみ抜いたL・アントネッリが密通し出来た赤児を殺す--という狂気へ駆り立てる。ラスト近い、その場面の恐ろしさ、純粋さ(開けた窓から雪が舞い込み、その冷気によって窓際に寝かせた幼子を殺そうというのである)……。巨匠入魂の、そして残念ながら最後の、自らの階級への痛切なる挽歌。映画データベース - allcinema より)

イタリアの耽美派作家ダヌンツィオの原作を基にしたヴィスコンティの遺作。
愛人を持つ男が、妻が別の男の子供を産んだことで苦悩する。
物語は、悲劇的結末に向かって進み、ヴィスコンティならではの優美な映像が展開する。
ヴィスコンティは当初、アラン・ドロンとロミー・シュナイダーの出演を望んだ。
当時、ドロンは5本の出演作品を抱え、シュナイダーは妊娠中だったことで実現しなかった。
ヴィスコンティ自身の別の発言では、アラン・ドロンとシャーロット・ランプリングともなっている。

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