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映画『ボッカチオ'70』 ヴィスコンティらイタリアの巨匠たちのオムニバス

映画『ボッカチオ'70』 BOCCACCIO '70 : Il Lavoro

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短編四つからなる、オムニバス形式の作品。
イタリアの現代劇を、イタリアの4人の巨匠(モンチェッリも巨匠なのかな?)が、独自のストーリーで語っていて、それぞれに特徴が有り面白い作品に仕上がっている。

ヴィスコンティは第3話「前金」(主演:ロミー・シュナイダー)の挿話を担当している。

ルキノ・ヴィスコンティの生涯についてはこちらから

ルキノ・ヴィスコンティ -作品と演出- はこちら

第1話「レンツォとルチアーナ」(劇場公開時は、第2話)

会社に黙って結婚した若いカップルが、親との同居の問題や、上司のセクハラ?の問題にぶちあたり、最後は...と言う、若いカッ プルの右往左往ぶりを軽いタッチでさわやかに描いている。
当時のイタリアの若者達の生活が垣間見れて面白い。
まっ当時も今も、若い夫婦の悩みは余り変わらないのかも。
監督の個性が余り感じられない分、判りやすく見易い、逆に物足りないと感じるかも。

第2話「アントニオ博士の誘惑」(劇場公開時は、第1話)

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これはもう、フェリーニ、フェリーニ、フェリーニで有る!
物語の進行役に子供の天使?が現れ、ちょっと甲高い声で観客を物語の中へ導く。
そしてそこに出てくる堅物教授もまた、フェリーニのらしい人物像である。
それらの人物をフェリーニは、顔のアップで表情を映し出す。
フェリーニは、時に人々の動きを踊りであったり、群衆によって表現し、そして対照的に人物の表情一つ一つを強烈な顔のアップの映像で映し出す。
ヒッチコックは、“内面に燃えるような情熱を持ちながら表面上は氷のようにすました女性”を好んだが、フェリーニは見るからに情熱的な女性こそが男性を虜にすると言う、“男の性”を画面に映し出す。

アニタ・エバーグはフェリーニの女優らしい...そして彼女が、堅物の教授を虜にしていく姿、そして最後の教授の露わな惨めな姿が、男の本性なのである。
短編ながら見事なフェリーニらしい傑作である...
ただ、やっぱり私は、フェリーニの語り口は苦手で、それでいて好きなのだ。

第3話「前金」(劇場公開時は、第3話)

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今回観た中では、原題の日本語訳が「仕事中」になっていたが、書籍等で見る限り「前金」と言うタイトルが正しいのか?

ヴィスコンティが描いた女性は庶民ではなく、ブルジュワの女性。
彼女の立場とその哀れさを見事にこの短編の中に描いている。
そして、その登場人物の描き方が余りにも見事過ぎることに、やはり短編だったとしてもヴィスコンティらしい素晴らしい作品と言える。

仕事というものに意識がない(仕事が何かを理解をしていない)ブルジュワの女性が、仕事を理解する時、その彼女の立場が如何に不毛で悲劇的なものか、その属している階級から逃れられないかを、この短い時間の中で描ききっている。
素晴らしいのは、主演のロミー・シュナイダーである。
彼女は、一見うぶな女性でありながら妻としてのしたたかさ、それ以上に魅力的な女性を演じ切っている。
その魅力こそが、夫婦間に置いても男女の関係を成り立たせていることを、観客に納得させる演技力・魅力を兼ね備えている。
キューブリック監督の遺作『アイズ ワイド シャット』とある意味、テーマが近いのかもしれない(語り口は、全く違うので作品の評価とは直接関 係ないが...)。
しかしラストは圧倒的に、この作品の方が深刻で深いものを感じる。

この作品では、主演のロミー・シュナイダーがシャネルのデザインの洋服を着ている。
また歩き方や身のこなし方もシャネルが指導したらしい。
そうヴィスコンティに、ジャン・ルノワール監督を紹介したのは、ココ・シャネルだったんですね。

第4話「くじ引き」(劇場公開時は、第4話)

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デ・シーカらしく、庶民の一人の魅力的な(そしてグラマラスな)女性に対する思いと、そのドタバタぶりをコミカルに描いている。
残念ながら、この物語でキーになるのは主演のソフィア・ローレンの美しさに有るはずだが、どうも私の好み(の女優)ではない。
デ・シーカの描きたいのは庶民なのである。
一生懸命働いて得たお金を、女性とのSexのためのくじ引きにつぎ込んでしまうおじさん達。
そして、くじを買ってから、みんながその女性を見に行く下りは、可笑しさと悲しさが込み上げくる。
結局、くじに当たったのは、教会の仕事をしている童貞の男性(30代?、40代?)。
彼はやらずじまいで追い返されるのだが、周りの人は真実を知らずお祭り騒ぎになる。
彼女が真実の愛を選ぶと言う過程の話しと言うより、やはり振り回される男達の愚かさを笑いと共に描いている点で、デ・シーカら しく面白く観れる作品だった。

どの話も個性的で面白い。
共通していることは、どの作品も女性が男を振り回すのである。
必見の映画と言いたい、機会が有れば是非。

映画『ボッカチオ'70』のデータ

BOCCACCIO '70 198分 1962年 イタリア=フランス 公開情報:劇場公開公開年月:62. 65

監督■ヴィットリオ・デ・シーカ/フェデリコ・フェリーニ/ルキノ・ヴィスコンティ
製作■アントニオ・チェルヴィ/カルロ・ポンティ
脚本■チェザーレ・ザヴァッティーニ/フェデリコ・フェリーニ/エンニオ・フライアーノ/ルキノ・ヴィスコンティ/スーゾ・チェッキ・ダミーコ
撮影■オテッロ・マルテッリ/ジュゼッペ・ロトゥンノ
音楽■ニーノ・ロータ/アルマンド・トロヴァヨーリ/ピエロ・ウミリアーニ
製作会社■コンコルディア・チネマトグラフィカ/チネリッツ/フランシネックス/グレイ・フィルム
備考■イーストマン・カラー
日本公開■1962年
出演■ソフィア・ローレン/ルイジ・ジュリアーニ/アニタ・エクバーグ/ペッピノ・デ・フィリッポ/ロミー・シュナイダー/トーマス・ミリアン

第一話=アントニオ博士の誘惑
Le tentazioni del dottor Antonio 54分
監督■フェデリコ・フェリーニ
脚本■フェデリコ・フェリーニ/トゥッリョ・ピネッリ/エンニョ・フライアーノ
撮影■オテッロ・マルテッリ
音楽■ニーノ・ロータ
美術■ピエロ・ズッフィ
編集■レオ・カトッツォ
出演■ペッピーノ・デ・フィリッポ/アニタ・エクバーグ/ドナテッラ・デッラ・ノーラ/アントニオ・アックァ/エレオノラ・マッジ(キューピット)

第二話=レンツォとルチャーナ
監督■マリオ・モニチェッリ
出演■マリサ・ソリナス/ジェルマーノ・ジリオーリ

第三話=前金
Il Lavoro 46分
監督■ルキノ・ヴィスコンティ
原案■チェーザレ・ザヴァッティーニ(モーパッサンの短編『寝台の端で』による)
脚本■ルキノ・ヴィスコンティ/スーゾ・チェッキ・ダミーコ
撮影■ジュゼッペ・ロトゥンノ
音楽■ニーノ・ロータ
編集■マリオ・セランドレイ
出演■ロミー・シュナイダー/トーマス・ミリアン/ロモーロ・ヴァッリ/パオロ・ストッパ

第四話=くじ引き
監督■ヴィットリオ・デ・シーカ
出演■ソフィア・ローレン/ルイジ・ジュリアーニ/アルウィオ・ヴィータ

【解説】
 元々は4編のオムニバスだが、日本劇場公開版はマリオ・モニチェッリの監督したエピソードをカット(現在、発売されているビデオには収録。『デカメロン』の中世イタリアの作家ボッカチオが現代に生きていたら、こんな挿話をその著書に書き入れたかも知れない--。そんな発想で生まれた物語四編を、イタリア映画お得意のオムニバス形式で映画化した62年度作品(だから題名の“'70”は当時から見たら近未来を指していたのだ)。日本では無名のM・モニチェッリの担当作(結婚間近の男女の日常を明るく描いたもので、日本人には親しみやすい素直な青春譚だ)はカットされ、残るすでに知られた巨匠たちの三編で公開となった。現在は1・2巻に分かれビデオで完全な形で観られる。第一話デ・シーカの「くじびき」。北イタリアの片田舎で、遊園地の射的場を営む父の借金のカタに、クジの一等賞にされる娘ゾーエ(ローレン)をめぐっての男たちの狂騒をペーソスを漂わせつつコミカルに綴っている。ゾーエには隣村に恋人がいたが、一等を当てた冴えない寺男の母に“一生の想い出に一夜だけでも息子とつきあってくれ”と懇願される……。第二話は「誘惑」、フェリーニ作。熱心なカソリックの道徳家アントニオ博士は、部屋の前の広場に建てられた大看板のグラマー美女(エクバーグ)に激昂するが、いつしかそれは夢にまで現われ……というフェリーニ的な大らかなユーモアが実に楽しい。三話目はヴィスコンティ「現金」で、貴族の若夫婦の倦怠を皮肉っぽく描く。浮気性の夫をやりこめようと、娼婦に化けて誘惑の電話をしたはいいが、あまりに素っ気なく話に乗ったので、シラけた妻はそれから夫と寝る際には報酬を要求することに決める。いずれも作者の持ち味の出た作品の並んだ好企画と言えよう。映画データベース - allcinema より)

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