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映画『郵便配達は二度ベルを鳴らす』 ヴィスコンティの処女作

映画『郵便配達は二度ベルを鳴らす』 OSSESSIONE

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ルキノ・ヴィスコンティの生涯についてはこちらから

ルキノ・ヴィスコンティ -作品と演出- はこちら

2017年1月上映 2Kデジタル修正版について

今回上映されたものは、最近発見されたフィルムと現存するフィルムの中で状態の良いものを2Kデジタル化したものを上映。
残念ながら制作当初に有った140分版ではフィルムの状態が良いものがなく、今回は126分版での公開になったとのこと。

久々に改めて見ると、現代のドラマ(映画やテレビなど)の愛憎劇の要素が全て含まれているような物語構成が面白かった、因果応報あり、愛情のすれ違いからの憎しみへ。
一方では、ネオレアリズモとして時代性=イタリアの戦後の貧困も描かれている。

デジタル修復された映像に関しては、確かに大部分が綺麗に修復されているが、126分版でも全体の映像が汚い部分が散見されるのは残念、戦後のイタリア映画のフィルムの保管状態の悪さは、何となく伝え聞いているがこればかりはデジタル処理でもどうにもならない部分なのか、残念。
それでも、久々のスクリーンでの鑑賞の機会なので、現状で是非!

-イタリア・ネオレアリズモの軌跡- 公式サイトはこちら

『若者のすべて デジタル完全修復版』
『郵便配達は二度ベルを鳴らす デジタル修復版』 2017年1月7日~
『揺れる大地 デジタル修復版』 2017年1月21日~

2016年12月24日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開

ヴィコンティの映画監督デビュー作で完璧な作品

ヴィスコンティの映画監督デビュー作である。
それでいて、この完璧さは何だろう!この作品を機に、イタリア映画はリアリズムの道を歩む。
ヴィスコンティは、原作の持つ犯罪小説と言う趣よりも、男女の欲望を全面に描いている。
ここにあるのは、その後のヴィスコンティ作品にも現れる、人間の欲望とその行き着く先である。
妖艶な人妻の誘いに乗り、夫殺しをする男。
しかしそこには金銭的な二次的な欲望ではなく、愛欲という欲望にどっぷり浸かった男女が、自分たちの生のために、その手段に行き着く姿を美しく、醜く描ききる。
この映画には途中、男を浄化してくれる踊り子の女性が現れるが、結局、男にとってそれも欲望の対象でしか終わらない。

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ヴィスコンティの目は、常に人間の真実、その奥底に有る欲望を描写する事に焦点が合っている。
二人が愛を深めれば深めるほど、その欲望の罠にはまっていく。
それが良いとか、悪いとか、と言う倫理観ではなく、そこにはそれしか存在していかない。
愛した女性がたまたま、夫のいる女性であったに過ぎないのだ。
それは定まった仕事を持てない男の貧しさが生む悲劇とも言えるし、また安定した生活を求めたために結婚を選んだ女の貧しさの悲劇とも言える。
そう、金銭面の貧しさが、心の貧しさとも結びついている。

マッシモ・ジロッティ(主人公ジーノ役)の鍛えられた筋肉質の身体と、細く美しいクララ・カラマイ(主人公で人妻ジョヴァンナ役)の身体。
この二つの肉体を選ぶところから、ヴィスコンティの演出は始まっている。
そう、お互いを誘惑する二つの要素を見事に表している。
それは力強さと優美さ。
この世の尊いものが、互いに共鳴し有ったときに、欲望が渦巻き、悲劇への道をたどる。

この映画では、白黒の陰影とラストの立ちこめる霧の描写が、美しいまでに焼き付く。
ヴィスコンティは、デビュー作から既に完成しているのである。

 

映画『郵便配達は二度ベルを鳴らす』 のデータ

製作年度:1942 年
製作国:伊
上映時間:143分(140分とも)

監督■ルキノ・ヴィスコンティ
製作■リベーロ・ソラローリ
原作■ジェームズ・M・ケイン
脚本■ルキノ・ヴィスコンティ/マリオ・アリカータ/ジュゼッペ・デ・サンティス/ジャンニ・プッチーニ
撮影■アルド・トンティ/ドメニコ・スカラ
音楽■ジュゼッペ・ロザーティ
指揮■フェルナンド・プレヴィターリ
編集■マリオ・セランドレイ
美術■ジーノ・フランツィ
衣装■マリア・デ・マッティス
助監督■ジュゼッペ・デ・サンティス/アントニオ・ピエトランジェリ
製作会社■ICIローマ
備考■白黒
日本初公開■1979年
1979年5月26日日本公開時:133分
2017年1月7日日本公開時:126分

出演■マッシモ・ジロッティ/クララ・カラマイ/ジュアン・デ・ランダ/ディーア・クリスティアーニ/エリオ・マルクッツォ/ヴィットリオ・ドゥーゼ/ミケーレ・リッカルディーニ

【解説】
 戦中の、しかもイタリアでのジェームズ・M・ケインのインモラルな犯罪小説の映画化は、より濃密な男女の欲望の彷徨を描いている。
ネオレアリスモの先駆と言うよりも、その後のアントニオーニやベルトリッチの到来を予感させるような、ヴィスコンティの驚くべき処女作である。
舞台はカリフォルニアから北イタリアのポー河沿いということになり、登場人物の名もそれぞれイタリア風に改められているが、物語の骨子は原作や後のハリウッドでの映画化作品とも変わらない。
ただ、もっとむせ返るような官能に包まれて、不倫カップルの、夫殺しのサスペンスより、ただそうせねば愛を貫けない息詰まる情愛を丹念につづっている。
陰影の強い黒白画面に呑まれそうだ。映画データベース - allcinema より)

製作から37年を経て日本で初公開された、ヴィスコンティの処女作。
映画の原題は『妄執』 。
ジェームズ・M・ケインのこの原作は、 本作品を含めて4回の映画をされている。
’39年ピエール・シュナール監督でフェルナン・グラペ&コリ ンヌ・リュシエールの仏作品、
米で’46年にテイ・ガーネット監督がジ ョン・ガーフィールド&ラナ・ターナー、
’81年にはボブ・ラファエル ソン監督がジャック・ニコルソン&ジェシカ・ラングで。

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