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映画『コックと泥棒、その妻と愛人』 食欲と暴力とエロスの究極の映像

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映画『コックと泥棒、その妻と愛人』 THE COOK, THE THIEF, HIS WIFE & HER LOVER

コックと泥棒、その妻と愛人

欲望を召し上がれ。

ブラック・ユーモアの究極!

あまりに不気味な作品、あまりにもイギリス的なブラック・ユーモアに満ち溢れている。
傑作とも言えるし、意味の無い作品とも言える、個人的には両方。

私には、あまりにも人間の欲望をストレートに描きすぎている点がドラマ性を感じさせない。
そこに描かれる欲望、食欲と性欲だが、この作品では食事をする場所とセックスをする場所を、一つの場所とすることで、表裏一体で有ることを表現しているよう。

食事をしてはセックスをして、セックスをしては食事をして。
唯一、欲望を離れて(愛によって)セックスをする場面が、泥棒の妻とその愛人が愛人宅でセックスをするところ。
しかし、ここでも食事が運ばれてくる。
結局、愛も欲望の派生物にしか無いのかもしれない。

泥棒はその味も判らず、一流のフレンチのシェフに料理を作らせ、マナーを知りながらそれを無視して食べ続ける。
食欲を満足できないと暴れ、性欲を満足できないと暴れる。
暴力は欲求が満たされない時のはけ口になっている。
人間の根本をこの監督なりの表現で魅せている。

もっと俗的な見方をすれば、イギリス人特有のユーモアとも取れる。
これだけの料理が出ているにも関わらず、イギリス人である泥棒は味も判らない。
しかしグルメとしての知識が有る、これを皮肉っているとも言える。

この監督の独特の表現方法は、一見の価値は有る。
店内を彩るゴシック調、飾られている絵も中世のゴシック画。
衣装もまたゴシック調のもので、フランスの奇才デザイナー、ジャン・ポール・ゴルチエのもの。
泥棒の妻が身につけている下着がゴルチエらしいデザイン。

また部屋によって色彩が変わる。
レストラン内のブルー、厨房のグリーン、駐車場の暗いブルー、化粧室の白。
衣装もそれに合わせて色が変わっていく、まるで人間の心を写すよう。
泥棒の妻の衣装は、レストラン内では赤い衣装、化粧室に行くと白。
これは反射によるものではなく、衣装自体の配色を変えている。

ラストは余りにも怖い。
なんの意味が有るのか?人間を食する、食の究極の姿か?そして食した人間は殺される。

日本人には生理的に受け付けない、厨房のシーンと共に腐った食材、これらに生理的な嫌悪感を抱く。
ヨーロッパ人の強烈な文化、肉食文化を感じさせる。

マイケル・ナイマンの音楽は、この作品の雰囲気をより一層、盛り上げてくれる、秀逸。

Reviewed in 03.1999

ヒロインはヘレン・ミレンが演じる

今更ながらヒロインがヘレン・ミレンであることに気付く、今や大女優。
1969年に『としごろ』で映画デビュー、舞台女優としての経験も積みながら話題作にも出演、一方で今作品を含む、問題作に出演。

若い頃の美しさと共にセクシー系女優としても活躍。
そして2003年にも『カレンダー・ガールズ』でも、60歳目前でのヌードを披露している。

ご存知のように2006年には、ダイアナ妃の死を巡って窮地に陥った現在のエリザベス女王を見事に演じて米アカデミー賞主演女優賞を受賞している。
いくつになっても美しく圧倒的な演技力を持った女優。

映画『コックと泥棒、その妻と愛人』のデータ

THE COOK,THE THIEF,HIS WIFE & HER LOVER 124分 1989年 イギリス=フランス
監督■ピーター・グリーナウェイ
製作■キース・カサンダー
脚本■ピーター・グリーナウェイ
撮影■サッシャ・ヴィエルニ
音楽■マイケル・ナイマン
衣装■ジャン・ポール・ゴルチエ
美術■ベン・ヴァン・オス/ジャン・ローエルフス
編集■ジャン・ウィルソン
出演■リシャール・ボーランジェ/マイケル・ガンボン/ヘレン・ミレン/アラン・ハワード/ティム・ロス/イアン・デューリー/ゲイリー・オルセン/イワン・スチュアート

<DATA>

 グリーナウェイの名を一躍メジャーに押し上げた作品。

 夜の闇の中、悠然と輝きを放つ高級フランス料理店“ル・オランデーズ”。
 ここではゴシックの食卓画を思わせる絢爛たる厨房で、腕によりをかけたコック達が作る料理が毎夜テーブルに並べられていた。
 この店の一番の顧客は泥棒のアルバートとその美しい妻ジョージナの一行。
 自分の社会的ステータスを人に認めさせたいが為に、アルバートは盗んだ金で贅沢三昧、所かまわず乱行を働く傍若無人ぶりを発揮していた・・・
 この作品は、グリーナウェイの映画が苦手な人でも比較的入りやすい作品であると同時に、人間の持つあらゆる“欲”といったものがいかに醜いかといったことを、絢爛豪華な美術、独特のユーモアセンスで描いた、彼の作品群の中でも「ベイビー・オブ・マコン」と並んで3本の指に入る傑作だ。(一部略) <allcinema

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